「1.5TのSTIRなら、TIは150前後で決まりでしょう」── 整形外科領域を撮り続けていると、そう考えたくなるものです。プロトコルに一つのTIを焼き込んでおけば、脊椎も膝も足関節も同じ値で回せる。実際、多くの施設でそう運用されています。
01 | TIは固定値で本当にいいのか?
でも、ふと経験を振り返ると、いくつかの違和感に気づきます。
- 末梢(手指・足部)で、なぜか皮下脂肪が薄く残る。
- 大柄な患者や大FOV(全脊椎、両股、下肢全長)の端で、抑制が甘くなる。
- 骨髄が真っ黒にならず、灰色に光って見える。
ただし、これらがすべてTIの不適合を意味するわけではありません。末梢の残留には温度や反転効率も絡みますし、大FOV端の低信号は送信B₁の不足だけでなく受信コイルの感度低下も関わります。骨髄の灰色には正常な赤色骨髄の水成分も絡みます。
本稿の目的は、こうした抑制のムラを前にしたとき、「TIを変えるべき問題」と「TIでは直らない問題」を切り分けることです。そのために、TIを決める「式」が本来どんな条件の上に成り立つかを確認し(02)、脂肪のT₁がなぜ普遍的な単一値ではないかを見ます(03)。
扱う範囲を先に限っておきます。対象は 1.5T・整形外科領域・TSE前提 のSTIRです。造影後のSTIRは別の議論になるため今回は扱いません。3Tや低磁場、Dixon法との比較は補足程度にとどめます。
要点:「TI=150〜170 ms」の固定運用は、多くの症例で実用的です。ただし抑制のムラが生じたとき、それがTIで直るものかどうかを判断する材料が必要です ── それが本稿の出発点です。