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GE Flex Basics

GE MRI Flex基礎

FSE Flex / CUBE Flex の使い方と1-TR/2-TRの選び方


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導入

この記事のテーマ

GE MRIにはFlexという水・脂肪分離法があります。ざっくり言うとDixon法の仲間で、水と脂肪の信号の位相のズレを利用して、水画像・脂肪画像・脂肪抑制相当画像を作ります。

Flexには大きく分けて2つの撮り方があります。

モード 何をしているか 特徴
2-TRモード 2つのエコーを2回のTRで取得 通常・安定寄り。時間は長め
1-TRモード 3つのエコーを1回のTR内で取得 撮像時間が約半分。ただし制限・注意点あり

この記事では、Flexの基本設定と実務的な使い分けを整理します。


02

結論:Flexを速く撮るスイッチがある

結論から言うと

GE MRIのFSE Flex/CUBE Flexには、Fast single TR bipolar acquisitionという設定があります。これをONにすると1-TRモードになり、撮像時間が約半分になります。

シーケンス 設定番号 名称
FSE Flex CV14 Fast single TR bipolar acquisition
CUBE Flex CV21 Fast single TR bipolar acquisition
意味
1.00(ON) 1-TRモード(高速)
0.00(OFF) 2-TRモード(通常)

Flexは速くて便利ですが、速くする代わりにFOV・BW・3T条件・静音設定に注意が必要です。


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FSE Flex と CUBE Flex の違い

FSE FlexとCUBE Flex

FSE Flex CUBE Flex
基盤 FSE(Fast Spin Echo)2D CUBE(GEの3D FSE系)
特徴 2DのT2/PD強調などで使用 薄スライス3D収集→後からMPR可能
腹部T2 Flex、骨盤T2 Flex 3D T2 CUBE、Spine CUBE
設定番号 CV14 CV21

FSE FlexとCUBE Flexでは設定番号が違うので注意。間違えやすいポイントです。

FlexとIDEALは別技術

FlexとIDEALはどちらもDixon系の水脂肪分離ですが、同じものではありません。

技術 基本の考え方 TE配置 補正・推定の考え方
Flex 2-point Dixon 対称な2点TE(in-phase / out-of-phase) GE独自のフィールドマップでB0不均一を補正
IDEAL 3-point Dixon 非対称TE 最小二乗推定で水・脂肪・B0成分を推定

Flexは「IDEALの別名」でも「IDEALの下位版」でもなく、Dixonという同じ大枠に入る別技術として分けて考えるのが安全です。


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Flexとは何か

Flexとは何か

FlexはGEで使われる水・脂肪分離法で、Dixon法の仲間です。基本は対称な2点TE(in-phase / out-of-phase)を使う2-point Dixon法です。

MRIでは水と脂肪の信号は少しずつ位相がズレます。そのズレを利用して以下を作ります。

  • 水画像(water)
  • 脂肪画像(fat)
  • 脂肪抑制相当の画像
  • in-phase / out-of-phase系の画像

ただし、現実のMRIでは磁場が完全に均一ではありません。Flexではこの磁場不均一(B0不均一)を、非対称TEの3点推定ではなく、GE独自のフィールドマップを使ってピクセルごとに補正します。

「普通の脂肪抑制よりも、水と脂肪を計算で分ける方法」と考えるとわかりやすいです。

特に腹部、骨盤、脊椎、関節、CUBEなどで使われます。


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2-TRモードと1-TRモード

2-TRモードと1-TRモード

2-TRモード(通常)

Flex計算に必要なエコー情報を、2回のTRに分けて集める方式。安定寄りですが、撮像時間は長くなります。

1-TRモード(高速)

Flex計算に必要な情報を、1回のTR内でまとめて取る高速方式。内部的にはFTED(Fast Triple Echo Dixon)に相当する方式と考えられ、3つのエコーを一気に取るので効率がよく、撮像時間が約半分になります。

重要なのは、ここでいう「3エコー」は3点DixonやIDEALのように3点を同時に連立方程式で解くという意味ではないことです。1-TRでは、3つのエコーを収集したあと、隣り合う2エコーずつのペアに2-point Dixonを2回適用し、最後に水画像同士・脂肪画像同士を合成します。

ただし無理して短時間で複数エコーを取るため、以下の注意があります。

  • BWが自動変更される
  • FOV設定に注意が必要
  • 3Tでは制限が出やすい
  • Acoustic Reductionと相性が悪い

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Fast single TR bipolarとは

Fast single TR bipolarとは

意味
Fast 速い
Single TR 1回のTR内でFlex用エコーをまとめて取る
Bipolar acquisition 読み出し傾斜磁場の向きを交互に変えながら複数エコーを取る

イメージ:普通は「行き」だけで読むところを、「行き」と「帰り」の両方でデータを取ります。その分速くなるが、エコー間の位相ズレや補正の影響を受けやすくなります。

この1-TR方式は、文献上のFTED(Fast Triple Echo Dixon)に相当すると考えられます。FTEDでは1TR内でbipolarリードアウトを使い、脂肪の位相角が −θ / 0° / +θ となる3エコーを集めます。θは可変で、必ず180°に固定されるわけではありません。

リコンでは、3エコーを一度に3点Dixonとして解くのではなく、E1+E2E2+E3 の2ペアに分け、それぞれに既存の2-point Dixonアルゴリズムを適用します。最後に2セットのwater画像・fat画像をmagnitude合成することで、SNR効率を高めます。

便利ですが万能ではなく、条件によってはOFFにされる設定です。


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1-TRモードのメリット

1-TRモードのメリット

① スキャンタイムが半分になる(最大のメリット)

2-TRで取っていたFlex情報を1-TRにまとめるため、理屈上は撮像時間が約半分。ただし実際は呼吸同期・Navigator・PI・SAR制限・スライス数・患者の呼吸状態が関わるため、完全に半分にならないこともあります。

② 腹部呼吸同期でも使える

1-TRモードは必要なエコーを1回のTR内でまとめて取るので、呼吸同期との相性がよいです。特に腹部・骨盤では撮像時間短縮のメリットが大きいです。

③ 腹部・骨盤ではデフォルトON

GEプロトコルでは、AbdomenとPelvisのFSE FlexではデフォルトONになっています。Resp.TriggerやNavigator使用時は強制ON(OFFにできない)です。

④ 2セット合成でSNR効率を稼ぐ

1-TRでは3エコーを集めますが、考え方は「3点Dixon」ではなく2-point Dixonを2回です。E1+E2から1セット、E2+E3からもう1セットのwater/fatを作り、最後に合成します。

この合成によって、単に速いだけでなくSNR効率の向上も期待できます。ただし、分離精度やswap耐性そのものが積極的に改善するかは公開一次情報では確認できていないため、ここは断定しない方が安全です。


08

注意点:FOVとNPW

注意点:FOVとNPW

Flexでは水と脂肪を計算で分けますが、FOVが小さすぎて体の一部が折り返すと計算が混乱します。結果として以下が起こりやすくなります。

  • 脂肪が水画像に残る
  • 水と脂肪が入れ替わる(swap)
  • 一部だけ脂肪抑制不良
  • 皮下脂肪や腹壁が変に写る

対策

  • 撮像部位全体が入るFOVにする
  • 体幹部では左右・前後方向の折り返しに注意
  • 必要ならNPW(No Phase Wrap)を使う
  • 腕・腹壁・皮下脂肪がFOV外にはみ出さないようにする
  • 位相方向を確認する

Flexでは「FOVをケチりすぎない」。折り返しがあると水脂肪分離が失敗しやすい。


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3.0Tでの注意点

3.0Tでの注意点

3Tは1.5Tより磁場が強く、水と脂肪の周波数差が大きくなるため注意が必要です。

  • ケミカルシフトアーチファクトが目立ちやすい
  • 水脂肪分離の条件が厳しくなる
  • 周波数方向matrixに制限がかかる
  • 小さいFOVでは1-TRが使えないことがある

特に 頭部・四肢・小さいFOV・高matrix・3T の組み合わせは要注意です。


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GEプロトコルのデフォルト設定

GEプロトコルのデフォルト

FSE Flex:CV14

条件 CV14
通常のGE FSE Flex OFFが基本
Abdomen ONが基本
Pelvis ONが基本
Resp.Trigger使用 強制ON
Navigator使用 強制ON

CV14がUser CVに出てこない/OFFにできない=故障ではなく、条件による強制ONです。

CUBE Flex:CV21

条件 CV21
通常のGE CUBE Flex ONが基本
Acoustic Reduction ON OFFになる
3T Head OFFになる場合あり
3T Extremities OFFになる場合あり
3TでFOV 25cm以下 OFFになる場合あり

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Acoustic Reductionとの関係

Acoustic Reductionとの関係

Acoustic Reductionは撮像音を小さくする設定です。

1-TRモードは傾斜磁場を速く切り替える必要があります。Acoustic Reductionは音を抑えるため傾斜磁場の切り替えをマイルドにします。両者は相性が悪いため、CUBE FlexではAcoustic ReductionをONにするとCV21がOFFになります。

静音化を優先すると、CUBE Flexの高速1-TRモードは使えないことがあります。


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1-TRモードでBWが変わる

BWが自動変更される

1-TRをONにすると、装置が自動的にBW(Bandwidth)を変えます。

1TR内に3エコーを詰め込むには、1つのエコーの読み出し時間を短くするしかありません。読み出し時間を短くするにはBWを広げる必要があり、これが物理的必然です。

BWが変わると以下に影響します。

  • SNR:BWが広いとSNRが下がる
  • ケミカルシフト:BWが広いと減少(一見良い)
  • 歪み:BWが広いと軽減
  • TE設定・matrix制限:影響あり

1-TRをONにすると、時間だけでなく画質条件も少し変わることを覚えておいてください。


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1-TR vs 2-TR 選択基準

1-TR vs 2-TR 選択基準

選ぶ基準 1-TR(CV ON) 2-TR(CV OFF)
とにかく速く撮りたい
SNR・画質を稼ぎたい
磁場が荒れる部位(金属近傍・3T)
小FOV・高Matrix ⭕(1-TRは制限で不可なことも)
呼吸同期・腹部ルーチン
swapが出て困っている (swapしやすい) ⭕(退避先)
3T・頭部・四肢 ⭕(CV自動OFFになることも)

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撮像前チェックリスト

撮像前チェック

  1. FSE FlexかCUBE Flexか確認(FSE→CV14、CUBE→CV21、間違えない)
  2. 1-TRにしたいなら該当CVがONか確認(0.00=OFF/2-TR、1.00=ON/1-TR)
  3. FOVが十分か確認(腹部・骨盤では腹壁・皮下脂肪・腕・臀部がはみ出ないか。必要ならNPW)
  4. 3T・小FOV・四肢では注意(CV21が自動OFFになることがある)
  5. BWが勝手に変わっても驚かない(1-TRでは仕様。ただし画質に影響するため画像確認)

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撮像後チェックリスト

撮像後チェック

water画像

  • 脂肪が抑制されているか
  • 局所的に脂肪が残っていないか
  • 水と脂肪が入れ替わっていないか

fat画像

  • 皮下脂肪・骨髄脂肪が自然か
  • 水成分が変にfat画像に出ていないか

折り返し

  • 位相方向にwrapがないか
  • FOV外の脂肪が入り込んでいないか

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Flex分離が失敗したときの対応順

Flex分離が失敗したとき

  1. FOVを広げる
  2. NPWを入れる
  3. 位相方向を見直す
  4. 患者中心・シミングを見直す
  5. 金属や空気の影響を確認する
  6. matrixやBW条件を無理していないか確認する
  7. 1-TRをOFFにして2-TRに戻す
  8. 必要なら別の脂肪抑制法を検討する

最初に見るべきは「FOV不足による折り返し」。


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基礎編のまとめ

まとめ

  • FlexはGEの水・脂肪分離法(Dixon系)
  • Flexは対称な2点TE(in-phase / out-of-phase)を使う2-point Dixon法
  • B0不均一はGE独自のフィールドマップで補正する
  • FlexとIDEALは同じDixon系だが別技術
  • FSE FlexとCUBE Flexには2-TRと1-TRモードがある
  • 1-TRモードは速い(撮像時間が約半分)
  • 1-TRは3エコー収集だが、リコンは2-point Dixonを2回行い、water/fatを合成する
  • FSE FlexはCV14、CUBE FlexはCV21
  • 腹部・骨盤・呼吸同期ではONになりやすい
  • CUBE Flexでは通常ONだが、Acoustic ReductionでOFFになる
  • 3T・小FOV・頭部・四肢ではOFFになることがある
  • FlexではFOV不足と折り返しが大敵→十分なFOVかNPWを使う

「Flexを速く撮るスイッチがある。でも速くする代わりに、FOV・BW・3T条件・静音設定に注意してね」

理論編「GE MRI Flex理論」では、Dixon・IDEAL・bipolar・swapの仕組みを深掘りします。Flexの「なぜ」を理解したい方は続けてご覧ください。


※要確認・未確認事項

要確認事項

  1. ※要確認:3つ目のエコー(外側エコー)がB0フィールドマップの補正精度向上に直接寄与するかは、公開一次情報では明確に確認できませんでした。シリコン分離など別応用では「外側2エコーは位相発展が2倍になりフィールドマップ生成に使える」との記述がありますが、通常の水脂肪FTEDでの磁場補正精度への寄与は定量的に未確認です。
  2. ※要確認:本資料のUser CV名称「Fast single TR bipolar acquisition」(FSE Flex=CV14 / CUBE Flex=CV21)と、文献上の「flexible FTED」の対応について、Sonら(2017, Magn Reson Med)はbipolar 3エコー(−θ / 0° / +θ)、隣接2エコーペアへの2-point Dixon適用、joint processingによるwater/fat生成を報告しており、本記事の記述内容と一致します。ただし、メーカー一次文書でCV名とFTED実装を明示的に対応づけた記載までは確認できていません。
  3. ※要確認:リコンを2回に分けることによる「分離精度・swap耐性そのものの積極的メリット」は公開一次情報では確認できず、主たる理由は実装合理性とSNR向上と解釈されます(推測を含みます)。

今回の訂正サマリ

訂正内容

  • Flexを「Dixon法の仲間」とだけ説明していた箇所に、対称な2点TE(in-phase / out-of-phase)を使う2-point Dixon法であることを追記しました。
  • B0不均一補正について、Flexでは非対称TEの3点推定ではなく、GE独自のフィールドマップで補正する旨を追記しました。
  • FSE Flex / CUBE Flexの章に、FlexとIDEALは同じDixon系でも別技術であることを補足しました。
  • 1-TRモードについて、文献上のFTEDに相当すると考えられること、3エコー収集後にE1+E2、E2+E3の2ペアへ2-point Dixonを2回適用すること、最終的にwater/fatをmagnitude合成してSNR効率を高めることを追記しました。
  • 1-TRを「3点Dixon/IDEALのように3点同時で解く」と読める可能性がある表現を避けるよう修正しました。
  • 分離精度やswap耐性への積極的メリットについては公開一次情報で確認できないため、断定を避ける記述にしました。

おわり